ぼくはかねてより視覚情報での知覚を優位にさせる方法をさがしている。
それは物理的に視神経での知覚を優位に…ということではなく、頭の中に描くイメージが優位になる状態のことだ。
他者(クライエント)の視覚的想像力を活性化させるために、いったいどんなことをしてみせるのが効果的なのか、例によってミルトン・エリクソンにそのヒントをみつけた。

エリクソンは誘導の多くで、アルファベットの文字について話している。

たとえば人生の一時期、bとdを区別するのにひどく苦労しながらアルファベットを学んだことを、クライエントに思い出させている。

これは、年齢退行を秘かに指示するものとして機能するだけでなく、数を順に数えていったときと同様に、アルファベットの文字の視覚的表現へのアクセスを促してもいて、視覚を使ったアクセス法の特別なケースになっている。

 

たとえば「め」と「ぬ」と「あ」の違いについて書いて学んだ幼い頃の記憶を思い出させる話題。字を書ける者であれば誰にも経験のある話題をエリクソンはつかった。

それまで音として知覚していたものを視覚として意識させるように促す。

聴覚野から視覚野へと焦点が移行する構造の話題で、クライエントにとって視覚イメージを容易にする基盤をつくる。エリクソンの方法は鮮やかだ。

エリクソンは天才的な催眠誘導を行いながらも、それを体系的に説明できるわけではなく、感覚的に理解してやってのけていたらしい。

その何となく感覚でやってのけていたエリクソンの手腕を、リチャード・バンドラーとジョン・グリンダーという2人の言語学者たちが理論体系に列べようとしたのがこの本だ。

調べてみるとこの2人、神経言語プログラミング(NLP)の創始者らしい。

ぼくは19才の頃、NLPの本を読み漁ったが、どれも表面的な技法が書かれたハウツー本のようで、とてもじゃないがすきになれなかった。

いまでも本屋に行くと自己啓発としてのNLP本がいっぱいあって、ぼくは、ぼくはそういう技法だけを教えて構造を語らないものが大嫌いだから、自己啓発ビジネスとしてのNLPも嫌っていた。

でも元々はエリクソンの体系化に挑み、催眠療法の普及を目指す趣旨をもった2人によってNLPが生み出されたのだと思うと見方が変わった。

物事の源流を辿ることを忘れずに。

参考文献:ミルトン・エリクソンの催眠テクニックI: 【言語パターン篇】

 

 

 

石井 七歩 / Naho Ishii

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