大震災の発生した2011年、私はアーティストとしての活動を開始しました。
19歳だった私はあの日、大地の無邪気かつ絶大な力に直面すると同時に、自分が暮らす文明社会の脆さを実感し、えも言われぬ感覚に慄きました。そしてその感覚について考えているうちに、いつしか私は言葉で考えごとをするのではなく、視覚的な表現を用いて考えることに夢中になったのです。

現在私は、フラクタル構造と都市や社会との融合を、視覚的に描こうとしています。身を崩しながら過剰に発展してゆく人間社会、それらすべてを造作なく飲み込む大地の偉大なカオス。けれど私は自然を称賛して社会をさげすむつもりはなく、むしろこんなにも壊れやすい社会の構造に、たまらなく愛おしさを感じているのです。そのシンプルな愛情と憂いによって、私の描きたいという欲望は掻きたてられているように思います。

現代社会の構造と、宇宙の本質的な構造とを、重ね合わせた視界で人間は生きています。それをどうにか視覚的に描き出して眺めることが、私のやりたいことです。私の作品があなたの感覚と共鳴できたなら、こんなに嬉しいことはないと思っています。

2020年6月  石井 七歩

 
 
石井七歩 (いしいなほ)
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1991年3月16日東京生まれ。
2011年、村上隆のギャラリーHidariZingaroのグループ展でデビュー。
その直後より美術館での企画展や芸術祭に参加、現在も意欲的に活動の幅を広げている。

主な参加展覧会に、
堂島リバービエンナーレ ( 2011年 / 堂島リバーフォーラム )
超群島-ライト・オブ・サイレンス ( 2012年 / 青森県立美術館 )
VOCA展 ( 2013年 / 上野の森美術館 )
ドリス・ヴァン・ノッテン主宰 INTERPRETATIONS, TOKYO‐17世紀絵画が誘う現代の表現 ( 2019年 / 原美術館 )など。

主な個展に、
Broken Tokyo ( 2016年 / 中銀カプセルタワー / 銀座 )
ESCAPE ( 2020年 / tagboat gallary / 銀座 )など。