とある夜
 
そのとき私はいつの間にかその小さな窓に集中しすぎていたので、
ボーイング777-300の70メートルもある機体の存在も、それに乗る500名もの騒がしい人々の存在も、すっかり全て意識の外側に棄ててしまって、まるで自分のふたつの目だけが上空を飛んでいるように感じていた。
 
 
東京はすこしずつ
ゆるやかに近付いてきた。
 
 
まるでその場所に人間が集結していることを誇示するかのように、東京上空は半円状の青白い光につつまれていて、
その姿はまるで薄水色の巨大な紫陽花が水平線にくっついてるみたいに見えた。
 
 
それからというもの
 
 
夜になると、
その紫陽花のことを考える。
この仄暗い夜の街で、きっと今、私はあの薄水色の紫陽花の中にいるのだろうということを想像すると、
 
得体の知れない紫陽花に護られているような感じがして心地いい。