母さんへ

母の母を看取る母の姿を私は遠巻きに見ていた。祖父が死んで、祖父母が住んでいた三鷹の都営住宅を引き払ってから、もうかなりの年月が経っていたと思う。 母の母、すなおに祖母と書けばいいのだけれど、どちらかとい…

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シロイルカの化物

リンク過剰の社会。画面には触れれば何か起こるテキスト・アイコン・バナーが隅々まで溢れかえり、さわって無反応な部分があればそれは欠陥である。 タッチパネル以前と以後の画面移動感覚には、馬車と蒸気機関車より…

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書いた文章が襲ってくるぞ

ほんの少しのあいだだけnoteで記事を書いてみていた。 しかしシェアが前提のプラットフォームでは、どんなに意識しまいと気を強く持ったところで、どうにもハートと数字にぱちぱちと気が散ってしまう。むろんハー…

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余白のすくない迷路・飛び地のひらめき

小学生のころ、授業中、よく学校のノートに迷路を描いていた。はじめは大胆なスタートを切った迷路も、じわじわとノートが埋められていくうちに描き込める余白を失い、肩身のせまい退屈な道程になってゆく。終盤に差し…

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深夜のコンビニから

深夜のコンビニに入ると、店中に怒鳴り声がひびいていた。500mlのサワーを掴んでレジに向かうと、50代の男性店員が若い外国人店員を壁に追い詰め、罵詈雑言を浴びせているところだった。外国人店員はほとんど泣…

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「知的生産の技術」より

このところ文章を書きはじめると、いたたまれない気分におそわれる。車酔いによって絶景を楽しめなくなるのとおなじで、内蔵の不快感によって書きたいという気分を楽しめなくなってしまうのだ。 とはいえ、親しい友に…

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予想外の漂流

読書というのは食人行為である。 つまりこういうことだ。私は私自身が考案したわけではない見知らぬ誰かの言語をつかい、見知らぬ誰かの言語で考えている。見知らぬホモ・サピエンスたちが数万年をかけて使用してきた…

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私は都市の肉体の像を描いておきたい

とてつもない予感を覚えながらも、それがどんな意味を持つのかわからないことがある。 私が絵を描く時なんかは、必ずイメージとの邂逅が先にある。彼がどこからやってきたのか、どのように生まれ育ってきたのか、私に…

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