IDEAL WORLD – 理想的な世界


IDEAL WORLDシリーズは、石井七歩が最初に描き始めたシリーズです。

描かれている四角の建築物には、アーチ状の窓が特徴的に描かれています。 アーチ状をした建築構造が人類史に登場しはじめたのは、メソポタミアのウラルトゥ、ペルシア、ハラッパー、 古代エジプト、バビロン、古代ギリシア、アッシリアといった古代文明でしたが、アーチの利点を最大限利用した世界初の建築者は、古代ローマ人(紀元前6世紀〜)であると言われています。つまりアーチ状の建築群が存在しているということは、高度な都市のシステムを持っている、ある程度発展した文明の存在を示唆しているのです。

複雑に絡み合う線状の抽象物は「フラクタル構造」を意識して描かれています。
フラクタルとは幾何学の概念で、図形の全体像とその一部が似た形をしていることを言います。このフラクタル構造は自然界の様々な面で見られます。例えば海岸線の形、山の形、枝分かれした樹木の形。生物であれば、血管の分岐構造や腸の内壁。そして株価の動向など社会的な現象も、フラクタルな性質を持っています。

描かれたフラクタル構造は「自然界に満ちている法則」の比喩でもありますが、有限の紙の上に、無限の表面積を持つ形状を描こうとすることで、鑑賞者の想像力、つまり人間の脳の見えない部分を補完しようとする能力を借りて、無限に広がる世界観を描こうとしています。

IDEAL WORLD「理想的な世界」と名付けられたこの作品群には、ひとつひとつそれぞれ異なった背景やテーマが存在しています。

人間の頭のようなものが描かれている作品のことを「擬人化ならぬ《擬都市化》である」と石井は表現しており、これは人間の少女の性格を《擬都市化》してみせることで、逆説的に、我々が現在暮らしている都市の、まだ幼い少女のように未成熟な性質に気付き、その都市の少女的な未成熟さに対して寛容的であろうとするための試みとなっています。

 

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IDEAL IDOL – 理想的な偶像(アイドル)


IDEAL IDOLは、少女の身体をモチーフとした作品群です。

最初にこの作品が生まれたのは2011年、東日本大震災直後のことでした。
「母なる大地」という言葉のとおり成熟した大人のようなイメージを抱いていた大地が揺らぎ、建物が倒壊するのを目の当たりにしたとき、もしかして「母なる大地」はまだ未熟な少女なのではないか?と考え、そこから少女と都市を合体させた最初の作品群が生まれました。
自らの身体を開発され建築群を突き刺され、くすぐったがって身をよじらせて微笑んでいるような、そんな少女としての大地像を表現したのがこの《IDEAL IDOL》シリーズです。

 


IDEAL AVENUE – 理想通り


石井七歩は幼少期から青年期までを、埋め立てられたばかりの土地に経つ団地の中で過ごしました。
IDEAL AVENUEは、その原風景とも言うべき集合住宅育ちの経験から、東京中の団地やアパートやマンションなどの集合住宅を写真に収め、それらをコラージュして島のような一つの大通りをつくり、ドローイングを融合させた作品群です。

あまりにも古く崩れそうな団地から最新のタワーマンションまで、ありとあらゆる集合住宅の寄せ集めで作られた街は、その貧富の格差や精神性の差異をもひとつの塊として抱擁しています。

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TOKYO PERFECT WORLD – 完全都市東京


TOKYO PERFECT WORLDは、2010年代の東京のアーカイブです。

バブルの崩壊が始まった1991年、東京に生まれた石井七歩が見てきた東京の姿は、夢も浪漫もなく、ただただ現実的・機能的な場所としての都市の光景でした。そんな都市の姿はどこを切り取っても画一的で、無個性で無表情なコンクリートの景色として目の前に広がっています。

しかし、 無個性で確固たる色がないという特徴ゆえに「色のあるものに対して寛容」なのが、東京のもう一つの特徴です。
俯瞰では見えて来ませんが、焦点を絞って観測すると、バグとでも言うべき唯一無二の特異性が点在しているのがわかります。そしてその特異性は10年代に入り、さらに加速しているのです。

TOKYO PERFECT WORLDシリーズでは、石井が「唯一無二の特異性」を感じる都市を、作品化して保存しました。

2017年現在、この作品に見えるのは「現在の東京の姿」でしょうけれども、10年後、20年後、さらにはシンギュラリティ(技術的特異点)を迎えると言われている28年後の2045年、この街並みがどのような意味を持って見えるのか? 今は未だ分からない未来の視点に思いを馳せながら、2010年代を作品化しています。

 

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