母さんへ

母の母を看取る母の姿を私は遠巻きに見ていた。祖父が死んで、祖父母が住んでいた三鷹の都営住宅を引き払ってから、もうかなりの年月が経っていたと思う。 母の母、すなおに祖母と書けばいいのだけれど、どちらかとい…

0件のコメント

シロイルカの化物

リンク過剰の社会。画面には触れれば何か起こるテキスト・アイコン・バナーが隅々まで溢れかえり、さわって無反応な部分があればそれは欠陥である。 タッチパネル以前と以後の画面移動感覚には、馬車と蒸気機関車より…

0件のコメント

深夜のコンビニから

深夜のコンビニに入ると、店中に怒鳴り声がひびいていた。500mlのサワーを掴んでレジに向かうと、50代の男性店員が若い外国人店員を壁に追い詰め、罵詈雑言を浴びせているところだった。外国人店員はほとんど泣…

0件のコメント

予想外の漂流

読書というのは食人行為である。 つまりこういうことだ。私は私自身が考案したわけではない見知らぬ誰かの言語をつかい、見知らぬ誰かの言語で考えている。見知らぬホモ・サピエンスたちが数万年をかけて使用してきた…

1件のコメント