巨人のあかちゃん

  ある日ぼくは、 あまりにもぴったりなものを探そうとしていたことに気が付いた。 まいにち散歩しているこの町と、そのとなり町とそのとなり町で、いまだにぼくがだれにも出会えないでいるのは、きっとぴったりなものを探…

桜とコンクリート

酩酊した人々に交じって桜を見るのが良いなんて全く信じられない。 今日は人づきあいで中目黒に桜を見に行った。 目黒川沿いを歩いていると「青空じゃなくて残念。写真に撮ってもわかりづらいね。」と聞こえてきた。後ろを歩く知らない…

Deus ex machina

ハンバーガーが好きなんじゃなくてファストフードに惹かれるのだ。 オニギリが好きなんじゃなくてコンビニに惹かれる。 チェーン店の無機質な機械がガーガーと乱雑にノイズを撒き散らして造るコーヒーがいい。 まるでロールプレイング…

1ヶ月ぶりの太陽

いつも夜に朝をむかえる。 太陽より先に帰宅して遮光カーテンを閉めて、そして正午までにはベッドに入る。 カーテンもシーツも毛布も抱き枕も全部チョコレート色だけど、どちらかというとカブトムシの幼虫を育てる時の腐葉土みたい。暗…

東京上空

      とある夜   そのとき私はいつの間にかその小さな窓に集中しすぎていたので、 ボーイング777-300の70メートルもある機体の存在も、それに乗る500名もの騒がしい人々の存在も、すっかり全て意識の外側に棄てて…

理想郷について

  理想郷は記憶の中に存在する。 ぼくはこの休日、紅葉狩りに出かけた。 赤黄色に染まる木々が風にそよぐ光景は、なるほどたしかに絶景ではあったのだが、 ぼくがほんとうに身震いするような感動をおぼえたのは、絶景を眺…